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Barco Madera(バルコ・マデラ)

南北に3本の風道のあるマンションリノベーション

場所:四日市/竣工:2019年7月/延床面積:21.5坪/構造:RCマンション/種別:リノベーション/施工:永田建設㈱

 

築31年RCマンションにある12階の部屋のフルリノベーション依頼。とある会社を経営するオーナーのセカンドハウスとして、仕事が遅くなる時やプライベートで友人を招待する時などに使っている部屋。とは言えここでの滞在時間は長く、自宅の事、ご両親の事など少し複雑に絡むいろいろのお悩みがあった。その中でこの部屋(マンション)の在り方についてご相談をいただき、初回面談からほぼ2年を掛けて完成となった。

設備はとても古くなり、また壁や換気口からの雨漏れもあった。この建設の時代、外壁・屋根面の断熱はなく、北の個室には壁掛けエアコンが取り付けられず(室外機が置けない)、寒さ(暑さ)と結露に悩まされていた。南北と西側に窓があるが、ほかのデベロッパー設計マンションと同じように南北の窓をまっすぐ繋ぐような空間設計ではないため、空気が流れない。ただし南と西の窓は12階という高さのために強い風が流れるため、その意味では夏は比較的涼しいのだが、強い風のコントロールは難しい。キッチン・脱衣などは各々狭い部屋に入っていて、ここも空気は流れず、夏は相当に暑い。当然全体的な動線も良くない。

そこでスケルトンのフルリノベーションとして、間取り全体のプランから考え直す事とした。各々が狭い4DKという間取りを、1LDK+小上がり和室として不要な間仕切りを外した。浴室と脱衣室の場所を移動し、脱衣室に二つの入口を設けて通り抜けできるようにするだけでなく、キッチンと浴室というコアの周りをグルッと回れる『回遊動線』を作りだした。
もともと南北に空気の流れる道が通っていなかったが、回遊動線を含み、南北の窓(玄関んを含む)を風が真っすぐ通る『3本の風の道』をプランの中に落とし入れた。
各扉はトイレ以外はすべて引き込み戸として風に影響されないようにし、夏場には家中をゆっくりとした風が流れる。冬場も、その家中の繋がった空間を利用し、また全体に断熱改修とインナーサッシを施して、すべての部屋が1台のエアコンだけで冷暖房出来ることとなった。狭い部屋から引っ張り出されたキッチンも、常に他の部屋と同じ環境で、非常に居心地がよくなった。
カーペット敷であった床は、濃く塗られた杉の無垢フローリング敷きにするが、音の問題を解決するために高性能な乾式遮音二重床としている。
小上がり和室は、お父様が利用されることを考慮し18cm高と低く抑えているが、そのニ重床スペース分も利用して、深さ25cm程度の畳下収納となっている。なによりこの小上がり和室で特徴的なのは、部屋を簡易的に間仕切る6枚の障子襖を工夫して、L型配置であるのに1ヶ所に引き込めるようになっている。
天井は一部にレッドシダーを色乱張りし、壁には浅い凹凸があり調湿性の高いシラスを塗っている。あまり天井には照明をつけず、灯りの重心を下げて、ウグイス色の壁の凹凸を照らして少し立体感を作っている。居心地と落ち着いた意匠性を丁寧に計画した。

この12階のマンションの西の窓から、鈴鹿山脈の稜線が見える。他に視界を邪魔する大きな建物が全くなく、絶景である。これまでは、マンションの窓高さの都合でダイニングの椅子に座った姿勢でしかゆっくりその絶景を眺めることが出来なかったが、小上がり和室に少し和の雰囲気のある低い椅子を置き、毎日静かにこの眺望を眺めているとの事。
工夫は他にもまだたくさんあるが、成功した文豪が終の棲家にするような、和モダンで少し贅沢で、そして動線がとても良く暮らしやすい部屋に生まれ変わった。

 

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